2005.10.18

ES細胞の倫理的問題を克服できる?

毎日新聞より「ES細胞:米チームのマウス実験 受精卵を壊さず作成

1個の受精卵から、正常な赤ちゃんと、どんな細胞にも成長できる万能性を持った胚(はい)性幹細胞(ES細胞)の両方を得ることに、米バイオ企業「アドバンスト・セル・テクノロジー」やウィスコンシン大などの研究チームがマウスの実験で初めて成功した。英科学誌ネイチャー(電子版)に16日発表した。
ES細胞ヒトのクローン胚から胚性幹細胞(ES細胞)を作り、再生医療に使う際に生じる倫理的問題を解決できる可能性を秘めた技術が、同時に2つ発表されました。

米国のベンチャー企業、アドバンスト・セル・テクノロジー社(ACT)などの研究チームは受精卵を壊さずにES細胞を作る技術を発表しました。マウスの受精卵が8つの細胞に分裂した8細胞期に、一つの細胞をとりだし、別のES細胞と一緒に数日間培養。すると細胞は未分化な状態を保ったまま分裂を続け、神経細胞や骨、心臓の筋肉細胞などに分化する新たなES細胞ができたとのことです。

一つの細胞をとりだした後の受精卵を代理母役のマウスの子宮にしれると、妊娠し、正常な赤ちゃんが誕生。

赤ちゃんとES細胞はもともと同じ受精卵から育ったことから遺伝子は同じ。このためES細胞を凍結保存しておけば、将来、けがや病気で治療用の細胞や移植用の臓器が必要になった場合に、拒絶反応なく利用できることになる。
また、kこれとは別に、マサチューセッツ工科大(MIT)の研究チームはクローン個体誕生を防止する技術を開発し発表しました。

クローン胚は、核を抜いた卵に体細胞を移植してつくります。これを培養すると胚性幹細胞になりますが、この卵を仮親の子宮で育てるとクローン動物になります。

研究チームははマウスの細胞を取り出し、「Cdx2」という遺伝子を操作し、クローン胚を子宮に移植しても胎盤ができず子として生まれないようにしたのち卵子に移しました。できた胚を仮親の子宮に戻しても着床しなかったとのこと。

一方、胚の内部の細胞を特殊な条件で育てるとES細胞ができ、普通のES細胞と同様の能力を持っていたということです。

受精卵から胚性幹細胞を作る方法は、将来に命として生まれるべき受精卵を壊しているという批判がありますし、クローン胚はクローン人間誕生などの危険性を秘めています。今回マウスで開発された新技術をヒトでも実現できればES細胞に科された規制も緩和されるかもしれません。

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2005.09.10

心臓から幹細胞発見!−心臓の再生医療の進歩につながるか

YomiuriONLINEより「心臓再生の幹細胞発見、来春にも臨床研究

人間の心臓の筋肉(心筋)は、病気で損傷すると修復しないと考えられていたが、京都大探索医療センターの松原弘明・客員教授と王英正・助教授らのチームは、心筋再生のもとになる「幹細胞」を世界で初めて取り出すことに成功した。
心筋ヒトの心筋に傷がつくと治らないとされ、重度の心筋梗塞などの治療には移植が必要でした。骨髄中の幹細胞を使って心臓病の治療を行う再生医療の研究も行われていますが、骨髄幹細胞で心筋細胞を増やすことはできないと思われています。

研究チームは、心臓病の患者約50人から手術で切り取った心臓の一部に酵素をかけて細胞をバラバラにして培養。約8000分の1の割合で幹細胞を発見しました。

この幹細胞を7−10日間培養すると、心筋や血管、神経などに変化。いろいろな組織の細胞になる幹細胞であることがわかりました。

この幹細胞を、心筋梗塞をおこしたマウスに移植すると、やはり心筋や血管細胞に変化し心臓機能も回復しました。

研究チームは、犬やブタを使った実験を行った上で、早ければ来年春に、心臓移植が必要な末期の心臓病患者に対し、患者自身の心筋幹細胞を移植する臨床研究を始める予定だ。
足の骨格筋からも同じような幹細胞が見つかり、同様の治療効果があったとのこと。本当であれば画期的ではないでしょうか。

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2005.07.09

骨髄細胞から筋肉を作る−筋ジストロフィー治療にいかせるか

YomiuriONLINEより「骨髄細胞から「筋肉のもと」、筋ジス治療に応用期待

人間の骨髄にある細胞から、筋肉のもととなる細胞を大量に作る方法を、京都大の研究グループが世界で初めて開発した。
 全身の筋力が少しずつ衰えていく遺伝病の筋ジストロフィー患者への治療に応用が期待される。8日付の米科学誌サイエンスに掲載される。
骨髄は大きく分けると、血液のもとになる造血幹細胞と、造血幹細胞どうしをつなぐ骨髄間質細胞に分けられます。

この骨髄間質細胞は、もともと分化してできた細胞ですが、さらに他の骨細胞や心筋細胞、軟骨細胞、脂肪細胞などに分化することが知られています。特に中胚葉由来の細胞になることが多いようです。

この研究では、人間から採取した骨髄間質細胞に細胞の分化にかかわる特定の遺伝子を入れ、細胞の増殖を促す4種類のたんぱく質を加えて培養する方法で、筋肉のもとになる「骨格筋幹細胞」を大量に作ることに成功しました。

これを筋ジストロフィーにしたマウスに移植すると、骨格筋幹細胞が筋肉に変化。病気のために筋肉が破壊されても、それを修復するように筋肉が再生し続けたとのこと。

鍋島陽一・京都大教授は「骨髄間質細胞は安全に採取できる。数年以内に、筋ジス患者への治療応用を目指したい」と話している。
骨髄間質細胞は、骨髄中に存在し骨髄穿刺で容易に採取できます。倫理的な問題が起こっているES細胞よりは現実的に使用しやすい細胞といえるでしょう。

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2005.07.06

白血病は幹細胞を利用し発症する

Yahoo!NEWSより「白血病は幹細胞利用し発症 東大医科研が仕組みを解明」(共同通信)

白血病は造血幹細胞が持つ再生能力を利用して発症するとの研究結果を東京大医科学研究所の中内啓光教授(幹細胞生物学)らのグループがまとめ、5日までに米医学誌に発表した。
白血病は、骨髄中で血液細胞を作っている造血細胞ががん化し、無制限に増殖する病気です。血液中に無秩序に増殖した白血球などが増え、正常な血液が行っている栄養分や酸素の運搬などの働きが十分行われなくなることで、貧血、感染、出血などの症状を引き起こします。

この白血病の原因は詳しくは解明されていませんでした。ただ多くの白血病では染色体の欠失や転移が認められます。

中内教授らは、マウスを使った実験で、造血幹細胞に含まれ、遺伝子の転写を調節するタンパク質(転写因子)の一つが異常に活性化すると、自己複製する能力が増強されて過剰な幹細胞の増幅を引き起こし、白血病が発症することを突き止めた。
以前は不治の病といわれた白血病ですが、最近は治療法も進歩してきました。でも仕組みが分かってなかったとは少しびっくりしました。

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2005.06.25

電位の波で脳細胞を作った

Yahoo!NEWSより「「電位の波」で脳細胞生成=世界初、脳梗塞治療への応用も−循環器病センター」(時事通信)

脳内の神経幹細胞に「電位の波」と呼ばれる現象を起こすことで新たな神経細胞を作らせることに、ラットの実験で成功したと、国立循環器病センター(大阪府吹田市)の柳本広二・脳血管障害・脳外科研究室長らの研究グループが24日、発表した。
この研究ではラットの脳に塩化カリウムを2日間注入。脳の中に電気活動の波を発生させたとのこと。その結果、神経細胞が新たに生まれたことを広範囲で確認したようです。この神経細胞は、神経細胞のもととなる神経管細胞から分化したと考えられています。

通常、神経細胞の外には多量のナトリウムイオン、細胞内にはカリウムイオンがあり、細胞内はイオンバランスによってマイナスの電位を保たれています。神経が刺激を受けるとナトリウムイオンが細胞内に流入し細胞内外の電位が逆転します。これにより電気的な刺激を神経細胞は伝えます。

この研究で言及されている電位の波というものがこれらの資料だけではよく分かりません。脳内に刺激を与えるのと何が違うのかな。

この現象は、神経細胞が失われることにたいする防御機構であると研究チームは考えているようです。

柳本室長は「世界初の実験成果。研究が進めばパーキンソン病や脳梗塞(こうそく)など、さまざまな脳障害の治療につながる可能性がある」と話している。論文は同日発行の米医学専門誌ストロークに掲載された。
この新しい神経細胞がネットワークを作るかどうかはまだよく分かっていないようです。

<参考>「ES細胞から大脳細胞を作成−ちょっと脳を増やしてもらえませんか(笑)」・「脳神経の再生に成功−脳梗塞からの復帰に光 その先は・・・

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2005.06.22

幹細胞の移植で腎不全の治療に光!

Asahi.comより「幹細胞移植で、マウスの腎不全を治療 東大グループ

腎臓の様々な細胞や組織のもとになる幹細胞を腎不全のマウスに移植して治療することに、菱川慶一・東京大助教授(腎臓内科)らのグループが成功した。20日付の米科学誌ジャーナル・オブ・セルバイオロジーに発表した。
研究では腎臓内の血管などに分化する腎臓の体性幹細胞の遺伝子をマウスで特定。この幹細胞が腎臓の間質(糸球体や尿細管以外の部分)に多数あることを確認しました。

この体性幹細胞1万個を急性腎不全のマウスの腎臓に、1匹あたり約1万個を移植したところ、7日後には血液検査などのデータがほぼ正常値に戻りました。幹細胞が腎臓を修復したと考えられます。

また腎臓摘出をした患者の腎臓を調べると、ヒトにも腎臓の体性幹細胞があることを確認。これを増殖させ本人に戻す手法が確立されれば腎不全の画期的な治療法になります。

現在、慢性腎不全により人工透析を受けている患者は24万人ほどいるといわれていますが、あまりにも生活に負担の大きな透析をしなくて良くなればこんないいニュースはありません。

菱川さんは「腎臓の幹細胞には様々な細胞に分化する能力だけでなく、組織を修復する能力もあることが分かった。患者の腎臓の幹細胞を体外で増殖させて戻したり、薬で幹細胞を活性化したりすることができれば、腎不全患者の治療につながる」といっている。
このような技術は一刻も早く開発して欲しいですね。

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2005.05.21

クローン胚からES細胞の取り出しに成功−現実的な成功率です

Asahi.comより「患者のクローン胚からES細胞、韓国チーム作製

韓国ソウル大などのチームは、将来の再生医療の対象と考えられる患者9人の体細胞を使ってクローン胚を作り、それを基にあらゆる組織の細胞になりうる胚性幹細胞(ES細胞)を11株作ることに成功した。米科学誌サイエンス(電子版)で20日速報する。
ES細胞ES細胞(胚性幹細胞)は体のあらゆる臓器に育つ可能性を秘めた細胞で万能細胞ともよばれます。一般的には受精卵からつくられ、98年に米国ではじめてヒトのES細胞が作られました。

今回は受精卵からES細胞を培養したのではなく、ヒトのクローン胚から現実的なレベルでES細胞を取り出すことに成功しました。昨年に同じソウル大がクローン胚からのES細胞の取り出しに成功していますが、今回はその10倍以上の成功率となりました。

ソウル大の黄禹錫(ファン・ウソック)教授のチームは卵子に成長する前の「卵母細胞」の核を取り除き、かわりに脊髄損傷や1型糖尿病、遺伝性免疫不全症候群などの難病の2−56歳の患者11人の皮膚細胞からとりだした核を移植。クローン胚を185個作成しました。このうち男女9人の細胞11個がES細胞に成長しました。

これらのES細胞から難病治療に必要な神経細胞や心筋細胞などをつくり出すことができれば、拒絶反応の心配なく治療することが可能になります。難病患者本人の細胞からES細胞をつくり出した今回の研究は、再生医療の大きな飛躍となるでしょう。

前回、ソウル大がES細胞をつくったときにはクローン胚176個からES細胞が1個しかできませんでした。

人のES細胞から特定の細胞や組織をつくる研究は着々と進み、これまでに心筋や血管、血液などが報告されている。ただ、ES細胞にはがん化などの懸念があり、クローン技術の安全性も確立したとは言えない。治療に使うまでには、まだハードルがある。
しかし問題はまだ山積しています。このES細胞から目的の臓器をつくり出す技術はまだ確立されていませんし、体細胞をつかったクローン動物は胎児期などに異常が現れることもあります。このES細胞から目的の臓器をつくり出し、それが安全だと確認されるまでには長い期間が必要でしょう。

実は僕も家族に治療方法のない難病患者がいます。うちの家族には間に合わなくても、なんとか治療方法が見つかることを祈っています。

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2005.02.23

骨髄幹細胞からヒトの腎臓をラットで作る

Yahoo!NEWSより「マウスで人のクローン腎臓 慈恵医大、幹細胞使い成功」(共同通信)

人の骨髄から採取した幹細胞をラットの胎児に組み込み、人と同じ遺伝的特徴を持った“クローン腎臓”をつくることに、横尾隆(よこお・たかし)・慈恵医大腎臓高血圧内科助手らが成功した。3月1日付の米科学アカデミー紀要(電子版)に発表する。
ES細胞による再生医療の研究が倫理的な側面からいまひとつ難しい状況にある現在、骨髄などの幹細胞による再生医療の進展のニュースは嬉しいものです。

しかし骨髄の幹細胞を使った再生医療は皮膚や軟骨などでは実用化されていますが、別の動物を利用して臓器そのものを再生した例はまだほとんどありません。

この研究では人の骨髄の幹細胞をラットの胎児に組み込みヒトの腎臓と同じクローン腎臓を作ることに成功したようです。どこまでヒトの腎臓と同じものなのかは論文がまだないため分かりませんが、この腎臓を別のラットの腹部に戻して発育させたところ尿がでることも確認されたとのこと。

横尾助手は「理論的には拒絶反応も起きない。同様の方法で膵臓(すいぞう)や肝臓などもつくれると思う」と話している。
もし他の臓器でも成功し、ヒトに移植できることになれば再生医療の大きな進歩になるでしょうね。

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2005.02.16

ブタ胚を臓器に成長させることに成功−異種移植につながるか

Yahoo!NEWSより「ブタ胚、人体移植への利用も可能=研究」(ロイター)

イスラエルの研究チームが14日、ブタ胚から作り出した新しい細胞や組織は、人体への移植に利用でき、成獣の組織を使用するよりもリスクが低い可能性があるとの報告を発表した。
ブタブタの臓器を人間に移植するための研究はずっと行われてきていました。ただ、急性拒絶反応があるためなかなか難しく、現在では拒絶反応がおこらないように遺伝子操作したブタの臓器をヒトに移植する研究も行われています。

ただ、今回の報告では、ブタの成体の臓器を移植に使うのではなくブタ胚からつくり出した組織を移植に利用できるのではないかということです。研究チームはブタの胚の細胞をマウスに移植し、肝臓や膵臓、肺などの臓器に成長させることに成功しました。

研究チームは受精後さまざまな時期のブタの胚から各種の細胞を取りだし、マウスの体内に移植。結果、肝臓をつくるには受精後28日の細胞、膵臓は42−56日、胚は56日などそれぞれ違ったタイミングで取りだした場合がうまくいったとのことです。

研究を率いたワイスマン科学研究所のヤイル・ライスナー氏は、「ヒトの胚性幹細胞(ES細胞)などについての倫理的な論争を考慮すると、ブタ胚の利用は臓器提供者不足に対してより明快な解決策を提供する可能性があると考えている」と述べた。
ヒトのES細胞の研究が論議を呼んでいる今、光が差してきそうな話題です。

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2005.02.07

ES細胞から大脳細胞を作成−ちょっと脳を増やしてもらえませんか(笑)

Yahoo!NEWSより「ESから大脳細胞を作成 治療薬開発、知能研究にも」(共同通信)

胚性幹細胞(ES細胞)から大脳のさまざまな細胞になる大脳前駆細胞を効率よくつくることに、理化学研究所発生・再生科学総合研究センター(神戸市)の笹井芳樹グループディレクターらが世界で初めてマウスで成功、米科学誌ネイチャーニューロサイエンス(電子版)に七日、発表した。
ヒトがヒトである証ともいえる大脳皮質ですが、神経前駆細胞(神経幹細胞)から分化する大脳皮質のニューロンは出生後は決して補給されないとずいぶん長い間信じられてきました。

しかし、最近の研究では大脳古皮質に限らず大脳新皮質においてもニューロンの新生が行われているのではないかといわれています。

さらにこの研究では試験管内で大脳細胞を効率的生み出すことに成功したようです。

脳は1000種類以上の細胞からできていますが、これまでの研究ではES細胞からつくり出すことができるのは主に脳幹の神経細胞でした。大脳の神経細胞はつくれても1−2%の効率でしかなかったようです。

今回はマウスのES細胞内にある「ウイント」「ノーダル」という二種類のタンパク質の働きを一時的に抑えることにより、ES細胞の9割以上を神経細胞に変えることに成功。さらに、この神経細胞に「ウイント」を添加すると大脳皮質の前駆細胞が、また「ソニック・ヘッジホッグ」というタンパク質を添加すると大脳基底部の前駆細胞ができたということです。

「ソニック・ヘッジホッグ」ってどこかのゲームソフトみたい(笑)

アルツハイマー病やプリオン病など大脳が関係する病気の解明や治療薬開発、大脳ができる様子や知能の研究にも役立つのではないかとみている。一年以内にヒトES細胞でも試みたいとしている。
脳も作れる時代になるのでしょうか(笑)

<参考>理化学研究所

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